「過労による自殺と労働災害の認定」
2006年11月に静岡県で自殺したキヤノンの男性社員(当時37)について、沼津労働基準監督署が労災認定したことが、13日分かった。男性の職場では午後10時以降の残業はできないようになっており、男性は深夜に自宅でパソコンを使い仕事をしていたという。男性側の代理人らがパソコンに残された記録などで残業時間を計算したところ、06年10月31日から自殺直前の11月29日までの残業時間は263時間に及んだ。(2008年6月14日「日本経済新聞」より) 上記のように過労による自殺と労働災害(以下、「労災」という)の認定については、近年、新聞などでも特によく取り上げられている話題といえます。 仮に労働者の自殺について労災が認定された場合、会社のリスクとしていくつか挙げられますが、特に大きなものとしては、会社のイメージダウンや遺族側からの訴訟、そして遺族側と労働基準監督署(以下、「労基署」という)との係争によるIPOの遅延などがあります。 もちろん上場企業ともなれば、こういったことがあった場合にはマスコミによる報道で、企業の評価は著しく低下してしまいます。また、労災とは別に遺族からの訴訟が提起される可能性があります。そして訴訟において、企業に責任があると認められた場合には、企業は損害賠償や慰謝料を請求されることにもなりかねません。さらに、IPOを目指す上では、遺族側と労基署が労災の認定について係争中の場合、その間IPOにも弊害があります。 企業が訴訟において安全配慮義務違反を免れるためには、事前に労働者に対してストレスチェックや面談をする、その他残業の多い労働者は医師に診てもらう、または労働者のための相談窓口を置くなどの配慮をし、労働者が過労により自殺しないように細心の注意を払っていたということを示す必要があります。逆に、労働者が自殺した際に、企業として何の対策も講じていなかった場合には、安全配慮義務違反を免れることは困難なものとなってしまいます。 そしてIPOを目指す企業にとっては、認定を巡って係争中の場合は、その事実を開示しなければならず、係争中はもとよりその係争が終了するまではIPOスケジュールそのものに影響を及ぼすことが考えられます。 以上のことを踏まえた上で、企業としては過労により自殺する労働者を出さないことが求められます。そのためにもしっかりとした労働者の健康管理を行い、こういった労務リスクにより、IPOに支障をきたさないようにしていくことが重要であると思われます。
株式会社大江戸コンサルタント 代表取締役 仲藤 和弘