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労務危機

「競業企業への転職を回避する競業避止誓約書について」

ライバル社転職、140万円支払い命令・ヤマダ電機元幹部社員に(2008/4/25 日本経済新聞)

退職1年間は競業他社に転職しないとの誓約書に違反したとして、ヤマダ電機が元男性社員に約420万円の違約金を求めた訴訟の判決が24日、東京地裁であった。長谷川浩二裁判官「幹部社員の競業他社への転換を一定期間制限する社内規定は有効」とし、元社員に約140万円を支払うよう命じた。

 昨今、終身雇用制度の崩壊等により転職など雇用の流動化が盛んになり、そういった中で、会社の機密を知る者がライバル会社に転職するという問題が生じています。人材の流出は会社にとって大きな損失であるのはもちろんですが、さらに会社の機密を知る者がライバル企業に転職したとなれば、会社独自の販売方法や経営戦略などの情報が漏れてしまうこともあり、それは会社として決して見過ごすことはできません。また、IPOを目指すうえでは自社独自のノウハウなどが従業員の転職などにより他に漏れるようなことがあれば上場審査にも影響を与えることになります。

 会社がこうした労務リスクを回避する手段として、上記のヤマダ電機のように誓約書を取り交わすことは有用な手段であるといえます。しかし、ただ誓約書を交わすことで競業他社への転職をすべて防ぐことはできません。なぜなら、本来労働者には「職業選択の自由(憲法22条)」があり、不当に労働者を拘束するような契約は「公序良俗(民法90条)」に反し無効となるからです。よって、誓約書が効力を持つためには、内容が合理的であることが必要であり、会社が自社の機密を保護するために労働者が被る不利益は限定的でなければならないということがいえます。

 では、誓約書の内容はどのように決定すればよいのでしょうか。それには、労働者の被る不利益を妥当な範囲に限定することが重要になります。限定例としては、同業社への転職制限の期間(ヤマダ電機の場合は1年)やその他にも場所的転職制限、転職職種の制限、転職制限に該当する労働者の制限などがあり、これらの制限が妥当であって初めて誓約書等は意味を持ちます。よって、仮にヤマダ電機が同業者への転職制限を10年と定めていたとすれば結果は変わっていたであろうと思われます。

 労働者の転職を巡るトラブルとしては上記のほかにも様々なものがありますが、どれにおいてもいえるのは、そういったトラブルを回避するための規定や契約が事前になされていることが非常に重要であるということです。そしてさらにその規定や契約の内容を合理的なものにすることで会社の労務リスクを一段と減少させることができます。

 経営に携わるような労働者が突然ライバル社に転職し、会社の優秀な人材と重要な情報が流出してしまうといったことが起こらないよう事前に対策をうつことがなにより重要なことであると思われます。

株式会社大江戸コンサルタント
代表取締役  仲藤 和弘


 

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