第1回 IPO準備会社におけるJ-SOX対応策
潟Gムアンドシー代表取締役
公認会計士 小倉 親子
2008年4月に入り、いよいよJ-SOX(金融商品取引法により導入される内部統制報告制度)の適用初年度になりました。まさに「J-SOX元年」のスタートです。すでに上場をしている企業にとっては、その対応に追われており、同時に様々な問題が取りざたされています。そこで、今月から、IPOを目指す企業にとって、J-SOXにどのように対応していくべきかについて、実際に内部統制の整備・構築を行っている現場の問題を交えながら、各フェーズにおけるポイントを解説していきます。
1.IPO準備会社におけるJ-SOXの位置付け
2008年4月1日以降開始事業年度において、有価証券報告書を提出する上場会社では、従来の財務諸表に関する監査証明に加え、経営者による内部統制の評価の結果について監査を受けることが必要となります。これがいわゆる「内部統制監査」です。すなわち、「財務諸表監査」だけでなく「内部統制監査」も行われることになり、監査証明が必要となったのです。
一方、IPO準備会社では、上場審査において、2期間分の財務諸表に関する監査証明が必要になります。つまり「財務諸表監査」を受けることが必要ということです。(もちろん直前期では「適正意見」であることも条件です。)
では、「内部統制監査」についてはどうかというと、上場審査時において「内部統制監査報告書」は不要ですから、上場前に「内部統制監査」を受ける必要はありません。このことから、IPO準備会社においては、内部統制を整備・構築する必要はないようにも考えられます。しかしながら、例えば2008年秋に上場を予定している3月決算の会社ですと、上場後最初に迎える2009年3月期において、J-SOXが強制適用されることになるのです。このことから考えると、上場準備作業の一貫として、J-SOXに対応できる内部統制を整備・構築していくことが必要になることがわかるかと思います。
上場申請時に「内部統制監査報告書」が不要ということは、経営者による内部統制の評価が直前期以前では不要ということを意味しています。しかしながら、上場後初の決算では、経営者による評価を行い、監査法人等による監査を受けることが必要なわけですから、遅くとも上場後初の決算を迎える半年ほど前までには、内部統制の整備とその評価までは終わらせておくことが求められるでしょう。なお、スケジュールについては、事前に、証券会社や取引所、監査法人と確認しておく必要があります。
| Point1 |
IPO準備会社でもJ-SOXに対応できる内部統制の整備・構築が必要!
整備評価は上場後初の決算の半年前までに終わらせるべき(証券会社あるいは取引所及び監査法人と事前にスケジュール確認をしましょう) |
2.どの程度のレベルの整備が求められるか?
IPO準備企業とはいえ内部統制の構築・整備が必要であることは理解して頂いたかと思いますが、どの程度までのレベルが求められるのかといった点で悩むのではないでしょうか?この点については、端的に言って、公開会社並みの内部統制報告制度への対応が求められると考えて下さい。
公開会社並みのレベルというのは、少なくとも「重要な欠陥」がないレベルです。ここで、「重要な欠陥がない」というのは、財務諸表に虚偽記載が発生するリスクが少なく、かつ公開会社が求められている四半期決算後45日以内に四半期業績の開示が行えるレベルの経理及び開示能力を有しているということを意味しています。
すなわち、それなりの経理能力を有しており、なおかつ、開示に関しても限られた日数で連結決算を含めた調整能力と開示能力が求められているということです。従来のIPO実務においては、コンサルティング・サービスも併せて提供してくれる監査法人が、決算や申請書類の作成に関してもかなりの労力をかけ、結果として上場させてくれる、といったケースも散見されましたが、今後は上場後の内部統制監査を担う立場であることを鑑みると、なかなかそこまで関わってくれることは期待できません。ですから、自社で上場準備作業を行う段階において、上場企業並みの経理レベルを構築していくことが必要といえるでしょう。また、上場後初の内部統制監査において、「重要な欠陥あり」と判断されるような会社をそもそも上場させるべきか、といった問題もあります。そういった意味でも上場準備作業と併せて内部統制の整備・構築作業が必要になるという点について認識を持つことが必要です。
ここで、IPO準備会社に求められるJ-SOX対応の第一歩は、「決算財務報告プロセス」に関する能力の向上であることを認識すべきです。とはいえ、公開会社並みの経理能力を有し、連結決算も出来て、さらに開示についても精通している人材を自社で育成することも、外部から雇用することも難しいのが現状です。なぜならば、自社で人材を育成できる体制を保持している大企業ならともかく、上場しているベンチャー企業においてもこのような人材は少ないため、募集をかけている企業が多いからです。したがって、上場準備作業を通じて必要なスキルを持った人材を育成していくことも上場という目的を達成するためには重要なポイントになるでしょう。また、各業務プロセスにおける内部統制の構築も不可欠ですが、どのように構築すべきかは次回解説したいと思います。
| Point2 |
IPO準備会社でも公開会社並みの内部統制の整備状況が求められる。
特に、J-SOXに対応するためには、経理能力の高い人材の採用又は育成が必要! |